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ユナイテッドアローズ敏腕バイヤーが語る
「ピレネックスに見るフレンチトラッドの真髄」

ピレネックスが日本に本格上陸を果たしたのは2016年秋冬のこと。
ユナイテッドアローズはそのファーストシーズンからいち早く展開し、この“最後の大物ダウンブランド”の魅力の啓蒙に一役買ってくれました。
ところでなぜユナイテッドアローズは当時日本で無名だったピレネックスに着目したのか?
同店名物バイヤーの内山省治さんに、今のファッショントレンドと絡めて語っていただきました。

年を経るごとに人気が加速し、今や最も勢いあるダウンブランドに!

ピレネックスについては、10年以上前にヨーロッパのショールームで拝見したときから、非常にクオリティの高いダウンウェアを作るブランドだなと認識していました。
何より唸らされたのが着心地。一見ボリューミィなのに、驚くほど軽く、フワッと着用できたんですね。
この圧倒的なロフト感と軽い着心地は、充填されるダウンそのものが高品質である証拠。
さすが様々なブランドを顧客に持つフランスの名門ダウンメーカーだなと思ったことを覚えています。
当然ながらすぐに買い付けを申し入れたのですが、当時のピレネックスはウェアのほうの生産体制が今ほど整っていなかったのか、残念ながらキャンセルに・・・。

だから2016年秋冬から本格的に日本展開を始めると聞いたとき、とても嬉しく感じました。多くのお客様が新たなダウンブランドの登場を待望していることを肌で感じていましたし、輸入代理店であるグリフィンインターナショナルさんの展示会ですぐにバイイングを決意したんです。

その2016年はファーストシーズンということでかなり型数を絞ったにもかかわらず、非常にお客様に好評でした。
でも本当に手応えを感じたのは、続く2017年秋冬コレクションからですね。

この年からピレネックスは、デザインをより洗練されたものへと進化させてきました。
もともとフランスらしいシンプルでオーセンティックなデザインが多かったのですが、そうした美点をより前面に押し出してきた感じでしょうか。
じつは僕、ファーストシーズンのラインナップに対して、パターンやデザインが若干こうだったらいいなと感じていた部分もあったんですが、2017年のコレクションではそれらも見事に修正されていた(笑)。
案の定、口コミで評価が高まっていき、ピレネックスを指名買いする人が目に見えて増えてきた。
続く2018年はさらに人気が凄く、12月の頭の時点でもう在庫が足りない状況になっていました。
たぶん今、最も勢いのあるダウンブランドと言っても過言じゃない存在でしょう。

いろんなダウンブランドを見てきましたが、ここまで無駄のないデザインは正直珍しいと思います。

なぜ日本では無名に近かったピレネックスがこんなに一気にブレイクしたのか? 自分なりに分析してみると複数の要因が見えてきました。

まず、ここのダウンウェアからはヨーロッパのブランドらしい洗練されたセンスを感じます。
アメリカやカナダのギアっぽいダウンとは明らかに違うムードがある。それは一番売れている「アヌシー ジャケット」に顕著。
キルトステッチのないシンプルな面構えといい、ビビッド過ぎないフェード感あるカラーリングといい、非常に大人っぽい仕上がりで、ウールのコートを纏うのと同等の感覚でドレスにもカジュアルにも違和感なく合わせることができます。
二番人気の「ベルフォール ジャケット」はキルトステッチが入る分よりスポーティな雰囲気ですが、それでも不思議とアウトドアっぽくはない。
だからニットにスラックス、白スニーカーなんてキレイ目なスタイルにすんなりハマる。こちらも無駄なデザインがないからでしょうね。
じつはこういうふうにシンプルな見映えでちゃんとシックに着られるダウンは他になく、ピレネックスが人気を博す大きな要因になっていると思います。

さらに今のファッショントレンドもピレネックスにとって追い風になっていると考えます。
ここ最近はトラッド、オーセンティック、ベーシックといった言葉がファッションの重要キーワードとなっているのはご承知の通り。
その流れの中で、感度の高い人たちが新たに注目し始めているのが “フレンチトラッド”。じつはフレンチトラッドの概念って我々服飾業界人でも説明がしにくいのですが(笑)、アメリカントラッドやブリティッシュトラッドとの違いは、おそらく余計なものを削ぎ落としていく美しさだと思うんですよ。
というのも、フランス人の作る服は、過剰なディテールはないのに、シルエットやカラーリングでお洒落に見せるものが多い。
そしてカジュアルなアイテムであってもどこか品良く見える。

ピレネックスのシンプルなデザインは、先ほども言ったようにアメリカやカナダのダウンほどのギア感がなく、イタリアのダウンのような余計な装飾性もない。
もちろんイギリスのアウターのような堅苦しさも感じません。
そのあたりのバランスがいかにもフランスらしいし、もっと言えば今注目されているフレンチトラッドを一着で体現できるアイテムと言える。
だからここまで短期間で浸透したんだと思います。

もちろん、もの作りの背景がしっかりしているのもここの強みでしょう。
最近はお客様のマインドも以前とは変わってきて、本当に価値あるものにしかお金を払わないという傾向が強くなってきています。
店頭で試着して興味を感じてもすぐには購入せず、まずスマホでその生産背景を調べ、納得した上で購入されるという人も多い。
その点ピレネックスの場合、原料となるダウン自体から自社生産しているわけですから、そういう意識の高いお客様たちも満足できるわけです。

と、あれこれ語れば語るほど、ピレネックスって本当に死角のないダウンブランドだなと思えてきました(笑)。
今の人気は一過性のものではなく、今後も高級ダウンの新たなスタンダードとして君臨すると確信しています。

UNITED ARROWS メンズチーフバイヤー 内山省治さん
1997年に入社後、10年間原宿本店の敏腕セールスパーソンとして活躍。その後2007年よりバイイング部門に移動し、現在はチーフバイヤーを務める。
個人的に一番好きなピレネックスのモデルは「サンテミリオン ジャケット」。「車での移動時や、室内でちょっと軽く羽織りたいときに一番重宝します。それ一着で完結してしまうアヌシーやベルフォールと違い、さまざまなレイヤードが楽しめるのもいいですね」とのこと。

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