PYRENEXと旅雑誌TRANSITで配信中の、web連載「フランスの街と自然をむすぶ人たち」。フランスで暮らす人たちにインタビューする企画の延長で、フランスに縁のあるアーティストの和田彩花さんとフローラン・ダバディさんを招いて、東京・丸の内でトークイベントを行いました。二人がフランスから感じた”ヒント”とは? その模様をお届けします。
TRANSIT:こんにちは、フランス生まれのダウンブランドPYRENEXと旅雑誌TRANSITのトークイベントにお越しいただきありがとうございます。
現在、PYRENEXとTRANSITでは、web連載「フランスの街と自然をむすぶ人たち」という企画で、フランスの人たちに生活について、仕事について、街についてインタビューする企画を行っています。今回はその延長線上で、「フランスでみつけた心地よく暮らすヒント」をテーマに、トークイベントを行います。
PYRENEX×TRANSIT連載
トークテーマに合わせて、ゲストをお二人お招きしています。フランスの絵画に惹かれてパリ留学をしたアーティストの和田彩花さん。そしてサッカー日本代表の元通訳者であり日仏の文化を届けるフローラン・ダバディさん。よろしくお願いします!
- 和田: こんにちは!
- ダバディ: よろしくお願いします!
- TRANSIT: それではさっそく自己紹介も兼ねて、和田さんとダバディさんの「私とフランスの関係」についてお聞かせください。まずは和田さんからお願いします。
- 和田: はい、私はフランスのパリに1年半ほど住んでいました。留学をしていて……というよりも、私としては”推し活”のようなものですね(笑)。エドゥアール・マネというフランスの画家が好きで、彼の作品をみたくてフランスに行きました。
フランスの絵画というと、印象派を思い浮かべるかもしれませんが、マネはそれよりもひとつ前の時代でレアリスムに区分される画家です。印象派の画家たちはマネの絵に強く影響を受けているともいわれています。
- ダバディ: 光あふれる印象派の絵画と違って、暗さのほうが強くでていますね。
- 和田: そうなんです、マネはスペインのベラスケスの明暗の描き方から影響を受けていたと聞きます。私は画家仲間だったモリゾを描いた絵画がとくに好きですね。オルセー美術館にはマネの作品がたくさん所蔵されていて、パリにいる間は何度も通いました。日本ではあまり知られていないけれど素晴らしい画家の作品もたくさんあるんです。それにセーヌ川沿いの広い空が見えるこの景色が好き。私は群馬の高崎育ちなので、空が見える場所が落ち着くんですよね。
- TRANSIT:実は2024年に発売したTRANSITのフランス特集でも和田さんにインタビューをしていて、フランス暮らしについてお話を伺っているんですよね。ぜひそちらも合わせて読んでみてください。ダバディさんはフランス出身ですよね。どこの街で生まれ育ったんですか?
- ダバディ: パリの16区です。パリの西のほう、セーヌ川の北側にあって、どちらかというと保守的な人たちが暮らすようなエリアで、僕が通っていた学校は代々フランス生まれでブロンドヘアの子どもばかりでした。僕は父がイタリアとフランスのミックス、母がアルメニアとフランスのミックスなんですが、そのルーツを言うと周りの子から羨ましがられましたね。「僕はひいおじいさん曽祖父がオランダだぞ」って言われたり(笑)。フランスの人は違いを個性として尊ぶときがありますね。
- 和田: 私は14区に住んでいたので、ご近所ですね。
- ダバディ: あの辺りは、パリのなかでもエスニックな雰囲気もある街ですよね。僕は異国の料理が好きだったので、よくベトナム料理やアフリカ料理を食べに他の区に足を延ばしていました。高校を卒業するときに、自分の強みは語学習得だと思って、フランスの学校で日本語を勉強し始めたんです。23歳の頃に日本で暮らし始めたので、もうフランスより日本の生活が長くなりましたね。
- 和田: 今でこそ、日本といったら漫画やアニメがフランスでも知られているけど、ダバディさんの頃はまだ日本のカルチャーはそこまで浸透していなかったんじゃないですか?
- ダバディ: はい、僕が子どもの頃は『ガッチャマン』がテレビで放送されているくらいでしたね(笑)。アルファベットではないレアな言語を学ぼうと決めて、日本語を選択したんです。それで日本で働いているときに、偶然、2002年の日韓W杯でサッカー日本代表の通訳をすることになったんです。何が起こるかわからないものですね。
- TRANSIT:今日、おふたりはPYRENEXを着ていますが、選んだポイントを教えてください。
- 和田: イベントの前にPYRENEXのお店で洋服を選びました。最初はジャストサイズのダウンベストを着てみたんですが、ふだんはオーバーサイズで着ることが多いので、このオレンジの大きいサイズを選びました。本当はメンズラインだったんですが、PYRENEXのお店の方が「自分が好きなサイズで好きなように着てもらうのが一番なので」と言ってくださったので、これに決めました。自由な着こなしを後押ししてくれるのがフランスらしくていいですよね。実はダバディさんが着ているベストと色違いです。
- ダバディ:本当だ、着る人によって雰囲気が変わりますね(笑)。僕はパープルがいいって決めてたので、このベストを選びました。日本だと男性が鮮やかな色を着るのに少し抵抗があるかもしれませんが、僕の父はスーツを着るときやふだんの服装から、ピンクのネクタイをつけたり、パープルのマフラーをしたり、色使いを楽しんでいたのを見て育ったので、僕もふだんの着こなしに色を取り入れることが多いです。
- TRANSIT: ダバディさんは打ち合わせのときに、PYRENEXに感じるフランスらしさという点で、「自由の精神」というお話をされていましたよね。
- ダバディ:PYRENEXは山と街を行き来できる身軽さがあって自由を感じますね。「自由」はフランス人にとってとても大事なことです。いろんな自由があるけど、なかでも「自分が自由にできる時間」というのを大切にしていると思います。
たとえば「アフターワーク」の時間もとても大事。日本では定時過ぎに会社に残って残業することを思い浮かべるかもしれませんが、フランスの人にとってアフターワークとは、仕事が終わって家に帰る前の自分のための時間のこと。カフェに立ち寄って、本を読んだり、新聞を読んだりしてもいいし、映画館に行くことでもいいんです。自分を成長させるための時間をつくるようにしています。
- 和田: 日本で余暇の時間となると、映画でも本でも、日常を忘れるような娯楽よりなコンテンツを選択する人も多いかもしれません。今、ダバディさんが言っていたものだとどういったものを選ぶんでしょうか。
- ダバディ:もちろんそういう作品もいいけど、自分への投資と思うと、文学性や芸術性のある作品を選ぶかもしれませんね。フランスはホームパーティを開く習慣があって、そこでは顔見知りだけじゃなくてはじめましての人がいて、異なる仕事や趣味をもつ人が集まって話すんです。そういったときに、自分が興味があること、最近観た映画や展覧会の話をしたりする。そこで盛り上がらないと、もうホームパーティに招かれなくなってしまう。パリは”コンペティション”な部分がありますね。
- 和田: その空気、ちょっとわかります。ただコンペティションといったときに、フランスではあまり経済的な意味合いが絡んでこないような気がします。
- ダバディ:そうかもしれない。それよりも人間らしさや文化的、社会的な部分がみられているかも。
- 和田: その話ともつながるかもしれないですが、私がフランスに暮らしていて感じたのは、お金を使わなくても豊かに過ごせるということですね。みんな天気がいいと公園の芝生の上でストレッチをしたり、本を読んだり、ピクニックをしたり、思いおもいに過ごしている。それが心地よかった。
- ダバディ:きちんとしたレストランで外食するのは、フランス人にとっても高いからね。ワインとバゲットとチーズをもって公園に行けば十分。自分でサンドイッチをつくればいいから。
- TRANSIT:和田さんはフランスに暮らしていて、他にも価値観の違いを感じたことはありましたか?
- 和田: パリにいる間、フランス語の語学学校に通っていたんですが、そのときのテストがユニークで。「市長にクレームの手紙を書く」という課題があったんです。日本ではなかなかないですよね。
クレームの書き方にもコツがあるんです。まずは自分が何を望むかが大事なんですが、それを他者にも結びつけて伝えるといい。たとえば、私が自転車通勤をしたいとする。より自転車に適した街にするには、どういったサービスやインフラがあるといいのかを主張する。それが実現すれば、環境にもいい、市民も住みやすい街ができる。それは市長のあなたにとってもよいことのはずだ。そんなふうに、自分のリクエストを他者に伝えていくんだと学びました。
- ダバディ:すごくフランスらしい(笑)。僕も警察とディベートすることがあります。
たとえば道端に車を停めて、5分だけカフェに入ってコーヒーを買って戻ってきて、警察から罰金を徴収されそうになったとき。「なぜ反対側の道路で長時間、路上駐車している車からは罰金を取らないんだ。あの車のほうが通行を妨げているじゃないか。僕の車は誰にも迷惑をかけないように駐車している。警察は市民が道路を使用しやすいように交通整理するのが仕事の一部だとしたら、僕からお金をとる必要はない」って。
それで相手がわかってくれることもあれば、「いや、どうしても今月は罰金でお金を稼がなきゃいけないんだ」と言われたら、運が悪かったなと思ってお金を払うこともある。不服ではあるけど、自分の考えを相手に伝えることができたから、よしとするという感じかな。フランスの警察だと、話し合いをする余地がある。アメリカや日本だと難しいかもしれない。ルールはルールという考え方だよね。
でも60年代、70年代くらいまでは、アメリカでも日本でも、話し合いというのができていた気がする。資本主義が影響しているんじゃないかと僕は思う。個人よりも、ルールや効率が優先される社会。フランスだと、法律は国を守るためじゃなくて、まず人を守るためにある、と考えているから。”治安がいい”というのも、気をつけなければいけない言葉だと思う。それは平坦で影のない管理された世界でもあるということだから。
- TRANSIT: ほかにも教育面で、フランスと日本の違いを感じる部分はありますか?
- ダバディ: フランスには、中学や高校で「哲学」の授業があります。これがディベートにつながってきます。ギリシアの哲学者たちも論理的に話し合うことからスタートしたように、この科目では自分の考えを他者に伝えることを学びます。
テストでもQ&A方式ではなくて、論じることを求められますね。たとえば歴史のテストでは、とある戦争がいつどこで起きて、どういった影響をもたらしたかをストーリー立てて説明することが求められることがあります。解答用紙がほぼ白紙なので、最初は頭を抱えてしまいますが、解き始めると自分だけの答えができていって楽しいんです。
あとは、僕が学生だった頃は、小学校や中学校で「倫理・道徳」の時間がなかったですね。
- 和田: それでいうと、フランスと日本では倫理の捉え方が違うのかもしれないと感じたことがありました。フランスではピル(低容量ピルや緊急避妊薬)が、病院や薬局などで安価に売られていたり、無料で手に入ったりするんですよね。女性にとって貧富の差も関係なく誰にでもアクセスできるもの。日本では徐々に使用する人が増えてきていますが、それでも値段や処方の面でフランスよりハードルが高いように感じます。
医療や女性の生き方という点での整備が行き届いているというか。あとはフランスは美術館や博物館が無料で開放されている日も多かったり、日本とは別の意味でのインフラが整っている気がしました。
- TRANSIT: いろんな角度からフランスらしさが浮かび上がってきますね。今日のテーマは「フランスでみつけた心地よく暮らすヒント」でしたが、いかがでしたか?
- 和田: フランスへ行く前と後で、私自身はいろんなことが変化したんですが、ひとつ大きく変わったのが、お金やものをたくさん持っていなくても豊かに暮らせるというのを知ったことですね。
フランスに行ってから、あまり服を買わなくなりました。もちろん季節ごとにいろんな服を着る楽しさもあるんですが、新しいものを買うよりもセカンドハンドのものを選んだり、好きなものを長く着るようになりましたね。そういう意味では、PYRENEXも長く着たくなるものですね。
あとは、自分の要求を他者に伝えることの大事さ。これはフランスで身についたものの一つです。
フランスの駅で電車に乗ろうとしたときに、あと10分で出発してしまう電車のチケットが券売機からは買えなくて、窓口の人に急げば間に合うから買いたいとお願いしたら、駅員さんがどうにかチケットを発券してくれたことがあったんです。もしかしたら嫌な顔をされるかもしれないけど、もしかしたら協力してくれるかもしれない。言うだけ言ってみようという気持ちが大事だなと。
- ダバディ: そうですね。結果がどうなるかはわからないけど、とりあえず自分の意見を伝えようとするという姿勢をフランスの人はもっているかも。
僕は日本の暮らしが長くなってきたので、フランスの実家に帰ったときに、母から「あなたは私の話を随分聞いてくれるようになったわね!」と喜ばれたことがあります。それまでどれだけ自分の話ばかりしていたんだろう……(笑)。
- TRANSIT: 和田さんも、ダバディさんも、「心地よく暮らすためのヒント」をテーマに、フランスと日本のエピソードを語り合っていただきありがとうございました。
アイドルとして活動後、大学院で美術史を学び、エドゥアール・マネの作品との出会いをきっかけに、2022年から約1年半パリに留学。現在は音楽活動や執筆など、アートを軸に幅広く活動している。
Instagram @ayaka.wada.official
◯Florent Dabadie(フローラン・ダバディ)
フランス・パリ生まれ。フランスで日本語を学び、1998年に来日。1999〜2002年にサッカー日本代表フィリップ・トルシエ監督の通訳・アシスタントを務める。現在はスポーツや文化を中心に日仏をつなぐ活動をしている。
Instagram @florent_dabadie
◯PYRENEX Pick up Item
ARIAL VEST(アリアル ベスト)
ロフト感がありコンパクト性にも優れるハイクラスなフレンチダックダウンを使用したライトダウンベストの「アリアル ベスト」。表地は超軽量なナイロンタフタを使用しており、圧縮すれば専用の袋にコンパクトに収納が可能です。携帯性にも優れ、軽量でも十分な保温性を発揮するのでデイリーに使いやすく、レイヤリング次第で秋から真冬、春先までの長い期間の着用ができる。
Jaket|ARIAL VEST
Price|¥60,500(税込み)
Color|Mermaid、Brown Ocher、Purple Reigen、Black
(和田彩花さん着用 Brown Ocher、フローラン・ダバディさん着用 Purple Reign)
Size|36、38、40、42(和田彩花さん、フローラン・ダバディさんともに、着用は42)
Matelial|フランス産 90%ダウン 10%フェザー 850フィルパワー フレンチダックダウン
Function|ウォータープルーフ、防風、パッカブル
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